最近、ネット上で「LINE離れ」という言葉を目にすることがある。若者の間では、LINEよりもInstagramのDMを代わりに使うケースも増えているらしい。
一方で、中高年のLINEの利用率は増え続け、いまやネットやスマホに疎い中高年でも「使っていて当たり前」のツールになっている。
そんな中でも、50代になった私はこれまで頑なにLINEを使わずに生きてきた。しかし、ここにきてLINEを使わない生活に限界を感じることも増えている。
本記事では、私がLINEを頑なに使わなかった結果、どのようなメリットやデメリットがあったのかに加え、LINEに代わるツールの選択肢についても考えてみる。
LINE離れが囁かれる若者とLINEに依存する中高年
LINEの月間利用者数は、LINEヤフー株式会社の自社調査で9,700万人(2024年3月時点)を超えており、国内でもっとも使われているSNSと言える。
しかし、国内最大級のマーケティング会社ビデオリサーチ社の調査によると、年代別のLINE利用率(最近1か月の利用有無)では、直近の10年間で大きな変化がみられる。
年代 | 2014年 | 2023年 | 倍率 |
---|---|---|---|
10代 | 40.3% | 66.0% | 約1.6倍 |
20代 | 51.5% | 76.5% | 約1.5倍 |
30代 | 46.6% | 80.1% | 約1.7倍 |
40代 | 34.6% | 82.8% | 約2.3倍 |
50代 | 23.6% | 82.0% | 約3.5倍 |
60代 | 5.8% | 75.7% | 約13.1倍 |
上記の表の通り、2023年には若者と中高年でLINEの利用率がほぼ逆転している。調査会社によって違いはあるものの、若者は他のSNSへ流れている一方で、中高年のLINEの利用率は大幅に伸びていることが窺える。
最近では公共機関でもLINEを利用することが増えており、10年の長い年月を掛けて新しさよりも安心感を求める中高年に、やっとLINEが浸透してきたのだろう。
年齢を重ねると新しいものに移行するのが面倒になるため、中高年のLINE依存度は今後さらに増えていくかもしれない。
50代になるまで頑なにLINEをやらなかった3つの理由
私にはLINEが主流の連絡手段となってからも、頑なにLINEをやらなかったのには主に3つ理由があった。
それは、LINEなんて「面倒くさい」「定着するはずがない」「使わなくても困らない」という些細なこと。
しかし、私と同じ中高年世代なら納得してくれる人も多いのではないだろうか……
LINEでコミュニケーションを取るのが面倒だった
今の中高年は、学生時代には携帯電話すら普及していなかった世代。今の時代のようにスマホを使って「いつでもどこでも連絡OK!」の感覚がない。そのため、スマホのコミュニケーションツールは便利ではある一方で、煩わしさを感じる鬱陶しい存在でもあった。
メールですら返信が面倒に感じていたのに、LINEはいつ終わるかも分からないメッセージの応酬に、耳障りな「LINE!」の通知音など、家でゆっくりしたいのに気が休まる暇もなくなるのではないか(そう感じていた)。
さらにメッセージが既読だから未読だから云々なんて、いちいち気を使うのも面倒極まりなく、断片的なLINEの使い方を聞いているだけでも、興味をそそるどころか、LINEの使用を避けたい気持ちの方が強かった。
ここまでLINEが定着するとは思わなかった
LINEのサービスが始まった当初は、名前も知らないメーカーの海外製アプリで当時からセキュリティの怖さを指摘する声もあり、「一時的な流行で終わるだろう」と考えていた。
しかし、今となっては公共機関までLINEサービスを提供している国民的なツールとなっている。「LINEはやっていない」ということに恥ずかしさを覚えるほどだ。
一時的な流行どころか、LINEに代わるサービスも現れることなく、国内では唯一無二のツール。せめて10年前にこの現実を知っていたら、「LINEは面倒だから」なんて、頑なにLINEをやらないこともなかっただろう。
LINEを使わなくても特に困らなかった
結局のところ、LINEがなくても生活に支障はなく、私はメールや電話で十分事足りていた。今なお、家族や親しい友人とも電話やメールでのやりとりが続いている。
実のところ、私と同世代の友人・知人には、いまだにLINEをやっていない人も多い。それがLINEを利用しなかった最大の理由だったかもしれない。
とはいえ、最近になってLINEをしていないことに「そろそろ必要なのか?」と悩み始めている。前述したようにLINEは若者世代のツールから中高年世代のツールへと移行してきたからだ。そろそろ頑なにLINEをしていないことに限界が近づき始めていることを感じている。
LINEをやらなかったメリットとデメリット
LINEを始めることを検討するようになったのは、LINEをやらないメリットよりもデメリットの方が大きいからだ。
今となってみれば、頑なにLINEをやらない理由が見つからない。そのなかで絞りだしたLINEをやらなかったメリットとデメリットを振り返ってみた。
LINEをやらなかったメリットは1つだけ
頑なにLINEをやらないことで得られたメリットは「時間を奪われないこと」くらいだった。LINEの通知に振り回されず、返信しなければいけないストレスもない。
参加したくないグループLINEの交流に巻き込まれることもなく、LINEをしたことによって余計な時間を奪われる心配はなかった。
しかし、それ以外のメリットはほぼ思い浮かばない。実際はLINEをやらなかったことで生まれたはずの時間も、結局はYouTubeや他のSNSの利用時間に変わっただけのような気がしている。
LINEをやらなかったデメリットの方が圧倒的に多い
LINEをやらなかったデメリットで最初に思い浮かぶのは、「えっ!LINEやってないの?」から始まる無用なやりとりが発生することだ。前述したようなLINEをやらなかった理由をいちいち説明しなければいけなくなる。
最悪のケースとして、LINEをやっていない人が私一人の場合には、連絡をする側の手間を増やすことになる。おそらく、ただLINEをしていないだけで周囲からは「面倒な人」に見られていたかもしれない。
最近では、仕事上でもLINEを使うことが一般的になってきたため、このまま頑なにLINEを使用しないという訳にはいかなくなってきた。プライベートでも年賀状じまいのお知らせとともに、LINEのQRコードが……
このまま頑なにLINEを使用しないままだと、仕事もプライベートも支障がでるのは避けられそうもない。
私の40代半ばになる妹も頑なにLINEをやらない一人だった。しかし、子どもの学校の連絡網としてLINEを使用しているらしく、致し方なくLINEを始めることに。LINEを始めなければいけないと思わせる、ママ友からの無言の圧力もあるらしい……
今さらLINEを始めたくない!LINEに代わるツール5選
結論から言えば、現時点でLINEに代わるようなツールは見当たらない。それでも、LINEと同じように利用するのが遅れて、時代に取り残されないように情報だけは押さえておく必要がある。
ここでは、今さらLINEを始めることに抵抗がある中高年に向けて、今若者を中心に仕事やプライベートの連絡手段として人気を集めつつあるツール5選を紹介する。
➀ Discord(ディスコード)
Discordは、元々ゲーマー向けのボイスチャットアプリで、多機能なコミュニケーションツールとして進化したツール。
LINEと違い、音声・ビデオ通話の品質が高く、画面共有やチャンネル機能で効率的なやり取りが可能。しかし、操作に慣れが必要で、日本では一般的な連絡手段として普及していない。
普段使いよりも、特定のグループや仕事、趣味の交流に向いているのが特徴。私もクラウドソーシングサイトで仕事を受注するために勉強したが、多機能過ぎて中高年が扱うには少々ハードルが高いと感じた。
➁+メッセージ(プラスメッセージ)
+メッセージは、大手キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)が提供するショートメールの進化版。電話番号さえあれば利用でき、アプリ不要で中高年にも使いやすい。
一方、LINEのような無料通話機能や豊富なスタンプ、タイムライン機能はない。また、キャリア契約者のみ利用可能で、格安SIMでは使えないのもネック。
LINEに代わるツールとして「余計な機能はいらない」「セキュリティを重視したい」という人には向いているが、現時点でわざわざ利用するほどの魅力には欠ける。
③WhatsApp(ワッツアップ)
WhatsAppは、世界的に利用者が多いメッセージアプリで、エンドツーエンド暗号化によりセキュリティが非常に高い。
LINEと違い、広告がなく、個人情報の収集も最低限に抑えられている。しかし、日本では普及率が低く、LINEのようにスタンプやタイムライン機能もないため、コミュニケーションツールとしての楽しさは少ない。
海外の友人やビジネス用途では便利だが、日本国内では「LINEでいいのでは」となりがち。セキュリティを重視するなら優秀な選択肢だが、国内での利便性ではLINEには敵わない。
④ Telegram(テレグラム)
Telegramは、軽量かつ高速なメッセージアプリで、LINEよりも圧倒的にセキュリティが高い。データ保存容量が無制限で、大容量ファイルの送受信も可能。
しかし、日本では知名度が低く、LINEのようなスタンプ文化やビデオ通話機能が少ないため、一般的な日常使いには向かない。匿名性の高さやハッキング耐性の強さを求める人には最適だが、普及率の低さが最大の弱点。
LINEに比べると「友達と気軽に使う」というより、「特定の用途に特化したツール」としての側面が強い。
⑤ Signal(シグナル)
Signalは、ジャーナリストや政府関係者も利用するほどセキュリティが高いメッセージアプリ。LINEと比べ、個人情報の収集を一切せず、完全なエンドツーエンド暗号化を採用。プライバシー保護を最優先にする人には最適だ。
しかし、日本では普及率が極めて低く、LINEのようなスタンプやゲーム、オープンチャットなどの娯楽機能も皆無。
純粋に「安全にメッセージをやり取りしたい」人向けであり、一般的なコミュニケーションツールとしてはLINEの代替にはなりにくい。
結論:代替ツールが見当たらない!中高年はLINEを使用するしかないかも……
現実的に考えて、ここ数年のうちにLINEを超えるような国民的ツールが生まれるとは考えにくい。AIの進化によって画期的な連絡手段が誕生したとしても、LINE同様に中高年に広まるのはだいぶ先になってしまうだろう。
とりあえず、今さらと言われてもLINEを始めておく必要があるのかもしれない。一方で、完全にLINEの利用に乗り遅れたことを教訓にして、次の新しいツールには敏感になっておく必要がある。
LINE同様にいつまでも「面倒くさい」「定着するはずがない」「使わなくても困らない」なんて、新しいものを頑なに拒否する中高年のままでは、社会から孤立する寂しい老後になってしまうかもしれない……