行政書士の開業準備のなかで、最大級のイベントの1つといってもいい事務所名の決定。それだけに思い入れのある自分がお気に入りの名前を付けたいところです。
しかし「自分が気に入っているから」という理由だけで、事務所名を決定することはオススメできません。それは事務所名によって集客効果が大きく変わってくるからです。
そもそも「集客できる行政書士の事務所名なんてあるのか?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、集客力向上につながる事務所名はあります。
その理由として、事務所名の違いによりGoogle等によるネット検索結果が大きく左右されるためです。当然のことながら、ネットで検索されやすい事務所名であれば、それだけ集客につながります。
それでは、ネット集客につながる事務所名はどのように決めるべきかについて、私自身の体験談も踏まえて解説していきます。
※行政書士の資格取得から開業までのロードマップはコチラをご覧ください。
- 行政書士の事務所名をどうするか悩んでいる人
- 事務所名の集客効果を知りたい人
- 実際に事務所名をつける過程を知りたい人
行政書士事務所名のルール
行政書士の事務所名のルールについては、行政書士会連合会が定める「事務所の名称に関する指針」で下記の5つの項目について記述があります。
1.「行政書士」の明示
2.同一名称の禁止
3.制限事項
4.行政書士法人の事務所の名称
5.名称使用の責任
これらの記述の中から、特に事務所名の決め方に関わる内容を一部抜粋すると…
- 事務所の名称には「行政書士」のワードを入れる
- 単位会の区域内で既に行政書士名簿に登録されている名称は使用できない
- 他の法律において使用を制限されている名称は使用できない
- 他の資格と誤認される恐れのある名称は使用できない
- 国又は地方公共団体の機関と誤認される恐れのある名称は使用できない
なお、詳細については、行政書士会連合会のホームページの事務所の在否確認のページをご確認ください。
以上のルールは、事務所名を考える前に最低限理解しておくべき事項になります。せっかく苦労して決めた事務所名に不備が見つかり、登録申請が却下されないように確認しておきましょう。
関連記事:【行政書士開業】食えないと言われる理由と不安対処法を体験談をもとに解説
ネット集客できる行政書士の事務所名の決め方5選
見込み顧客の年齢層が高い遺言・相続等をはじめとして、ネット集客には向かないと言われる業務があります。
しかし、スマホの普及により高齢者でもネットにアクセスすることが当たり前となり、これからの時代は、高齢者自体がネットに馴染みのある世代へと変わっていくことは疑いようがありません。
とはいえ、「ネット集客なんて難しそう…」と考える行政書士開業予定者も多いのではないでしょうか。そこで、難しいネット知識はなるべく排除して、事務所名の決め方のみで集客向上につながる施策について解説します。
1 わかりやすく短い事務所名にする
目や耳に触れたときにわかりやすい名前であることは、ネット集客に限らず、事務所名を世間に知ってもらうために重要な要素です。さらにネット集客においては、SEOで検索上位にあげるための施策の1つとして、なるべく短い名前にすることが推奨されています。
「いきなりSEOと言われても…」と思われるかもしれませんが、簡単にいうとSEOとは、ネット検索をする際に、指定のワードで検索結果の上位表示を目指すための施策のことをいいます。
当然のことながら、取り扱う業務の検索ワードで検索結果の上位に表示されれば、集客効果は絶大です。
最近では、このSEO対策の1つとして、指名検索を増やすことが重要といわれています。指名検索とは、ネット検索をする際に、行政書士の事務所名等の固有名詞を指定ワードにして検索をすることです。
私のハンドルネームを例にすると、検索エンジンのGoogleの検索窓に“ねこさち”と入力して検索した場合、指名検索をしたということになります。
仮に事務所名を「ねこさち行政書士事務所」とした場合、検索窓に“ねこさち”と入力した検索結果の上位に“ねこさち行政書士事務所”がでるようになれば、ねこさちが行政書士として、Googleに認知されている証拠になります。
このようにGoogleに“ねこさち”という名前が認知されることにより、ネット検索で上位表示される可能性が高まるわけです。
なお、ネット検索で使用されている検索エンジンのGoogle関連のシェアは、90%以上を占めているため、SEO対策はイコールGoogleの検索エンジン対策といえます。
このように指名検索を考えて事務所名を考えるのであれば、わかりやすい名前であると同時になるべく短い名前の方が検索時に入力しやすくなるわけです。
もし、“ねこさち”ではなく、たとえば“Cat happiness”という少し長い英語名だったとしたら、検索窓にわざわざ入力する人は、ほぼいないでしょう。当然、指名検索される可能性は低くなります。
2 一般的に使用されていない事務所名にする
行政書士の事務所名に限らず、世間には多くの会社名が存在します。そして、同じワードを含む会社名でGoogle検索すると、上位表示されるのは既に世間に認知されている上場企業ばかりになります。
これはSEO対策で最重要とも言われるEAT(「専門性」Expertise・「権威性」Authoritativeness・「信頼性」Trustworthiness)が上場企業等には備わっていることが要因の1つになっています。
そもそも現在のSEOでは、同じ検索ワードを使用して、個人事業主が政府機関や上場企業等より上位表示させることは困難とされています。それは行政書士も例外ではありません。
以上のことから、検索対象が少なく上場企業のように世間に認知されているワードが入っていない名前を事務所名にすることで、検索上位に表示される確率はあがります。
そもそも開業時に高いEATを備えることは不可能であるため、事務所名も競合が少ない名称を選択することがSEO的な視点でも得策ということになります。
3 専門業務や地域名を含む事務所名にする
ネットで何か調べ物をするときを想定してみてください。もし、行政書士事務所を探しているとして、どのようなワードをネットの検索窓に入力しますか?
おそらく、入力するワードの有力候補となるものが、専門業務や地域名ではないでしょうか。たとえば、行政書士に遺言書作成を東京都新宿区で依頼したいと考えていた場合、検索窓には「行政書士 遺言書 新宿」と入力するはずです。当然ながら、事務所名に専門業務や地域名が入っているだけで、検索結果に引っかかる可能性が高まるわけです。
「行政書士」はルールとして、事務所名に必ず含めなければならないものですが、専門業務や地域名は含める必要はありません。しかし、前述したようにネット検索をする場合を想定した場合、行政書士というワードよりも専門業務や地域名のワードを優先することが多いのではないでしょうか。
残念ながら、行政書士の世間の認知度は高いとはいえません。このことを踏まえて、ネット集客を高めるために、可能であれば事務所名に専門業務や地域名を含めたいところです。
事務所名に専門業務や地域名を含めることのメリットについては理解できても、現実的には事務所名が長すぎると思われる方も多いでしょう。
しかし、事務所名は行政書士登録を行う正式な事務所名とは別に、ネット専用で使用する事務所名もあります。
詳しくは、後述する「事務所名決定までの手順【体験談】」の手順④をご覧ください。
関連記事:【開業準備】行政書士の専門業務を遺言書作成に決めた理由
4 ホームページのドメインと整合性がある事務所名にする
ネット集客を見込むのであれば、当然のことながら、ホームページの作成は必須です。その際に、必要となるのがドメインと呼ばれるネット上のアドレスです。ここで注意しなければならないことが、事務所名と整合性のあるドメインを取得しようとしても、すでに使用されている場合は取得することはできないことです。
ドメインが事務所名と整合性がないからといって、SEO的なマイナス効果はありませんが、なるべく整合性がある方が事務所のホームページとして信頼性は向上します。
例として、事務所名が「遺言書作成専門ねこさち行政書士事務所」とした場合、下記の2つではどちらが適切だと思いますか?
- ホームページアドレス①「https://igon-nekosachi.com」
- ホームページアドレス②「https://kensetsugyou-inusachi.com」
極端な例ではありますが、前者のアドレス①の方が事務所名との整合性は高いことは一目瞭然です。万一、後者のアドレス②だった場合、お客さまに不信感を与えかねません。
もちろん、事務所名よりもドメインを優先する必要はありませんが、ホームページの作成を見据えて、可能な限り事務所名と整合性があるドメイン取得ができるようにしましょう。
5 事務所名に含めるワード順を考慮する
SEO効果があることが明確に立証されている訳ではなく、Googleも言及していることではありませんが、ブログ等でSEO対策をしている人たちが肌感覚として効果を感じる施策として、重要なワードは左側にもってくる方がよいということです。
たとえば、「行政書士」「専門業務(遺言書作成)」「地域名(新宿)」の3つの中で、何をもっともアピールしたいのかを考えた場合、地域密着型であることがアピールポイントであれば、新宿遺言書専門○○行政書士事務所となります。
さすがに上記の事務所名は長すぎですが、事務所名に含めたいワード順を考えるときには考慮するべき要素です。
難しいネット知識はなるべく排除してといっておきながら、SEOやらドメインやら、ネットに詳しくない人には聞きなれない用語に戸惑う方もいるかもしれません。
私自身もパソコン及びネット音痴のアラフィフですが、ブログを勉強することによって、ネットの知識が少しだけ身に付きました。
ブログを学ぶために選んだ先生というべき人がブロガーのヒトデさん。下記の記事をご覧になっていただき、ヒトデさんのブログやYouTube等を見れば、ブログだけでなくネット集客についても理解できるはずです。
関連記事:ブログ初心者の神!ヒトデさんがすごい8つの理由【おすすめ記事と動画も紹介】
事務所名決定までの手順【体験談】
私自身は行政書士登録前ではありますが、これまでにお伝えした事務所名の決め方を基準にして、すでに仮の事務所名は決めています。その体験談をもとに、事務所名決定までの手順をお伝えします。
手順① 行政書士登録されている事務所名を調べる
事務所名を決める上で、現時点で行政書士登録されている事務所名を確認することは必須事項です。行政書士登録ができない重複名等を確認することはもちろん、事務所名を考える参考にもなります。
なお、行政書士登録されている事務所名は、日本行政書士会連合会の行政書士会員検索で確認することが可能です。
私自身が事務所名を決める際に、まず確認したのが上記の日本行政書士会連合会のホームページです。行政書事務所名のルールでもお伝えしましたが、同ホームページの検索窓に「事務所名」と入力し、検索結果の中にあった「事務所名称の在否確認」より、事務所の名称に関する指針を確認することから始まりました。
手順② 事務所名に含めたいワードを洗い出す
行政書士会員検索すればわかりますが、行政書士事務所の多くは、氏名を事務所名の一部にしています。これは、行政書士としての自分の名前を知ってもらうためという理由が大きいでしょう。
また、ほとんどの行政書士事務所名が、氏名+行政書士事務所もしくは行政書士+氏名+事務所という形をとっているため、事務所名の定番として認識されていることも影響しているのではないかと思われます。
しかし、今回の記事の最大のテーマでもあるネット集客できる事務所名という点において、氏名を事務所名の一部にすることは、決して効果的ではありません。ネット集客に適したことを考えれば、前述したようにわかりやすく短いことや地域名や専門業務名等のワードを事務所名に入れることが重要になります。
以上のことこら。私自身が事務所名の一部として洗い出しをしたワードは以下のとおりです。
- 開業予定地に「地名」or「最寄り駅名」
- 専門業務に予定している「遺言書作成」
- 自分自身の思い入れのある名前「亡き父が経営していた会社名」
- 自分の好きな名前「ねこさち」or「猫幸」(猫が好きだから)
- 一応、定番として自分の氏名
事務所名には思い入れのある名前を入れたいものです。私にとっては、猫であり、亡くなった父が経営していた会社名でした。
モチベーションという意味では、もっとも効果のある事務所名の決め方かもしれません。
手順③ 事務所名の候補を絞り込む
手順②で洗い出したワードを組み合わせて、事務所名の候補を考えていきます。その際に気を付けるべきこととしては、以下の事務所名にはしないことです。
- 事務所の名称に関する指針等のルールが守られていない
- 他士業の業務と混同するような名前にしない
- インパクト重視の名前にしない
①は当然のことであり、②についても事務所の名称に関する指針の制限事項「他業種と誤認される恐れがある文言が含まれる名称は不可」の記述と共通しています。
しかし、「法律」の文言が弁護士しか使用できないと明確にされている一方で、使用できない文言が不明確な点もあり、注意が必要です。行政書士にとって業際問題は切っても切り離せない問題であるため、事務所名に少しでも誤解を与えるような文言は入れることは避けた方が無難です。
③については、一般の会社名等であれば、集客効果も含めて重要な要素の1つになりますが、士業の名前になるとインパクトは決して効果的ではなく、むしろマイナスに働くリスクを考えなければいけません。
私自身は、これまで何度か士業に業務依頼をしたことがありますが、堅いイメージの名称の事務所名を自然に選択していました。飲食店等とは異なり、やはり士業はインパクトよりも信頼性が大事です。余程の事情がなければ、インパクト重視の名前は避けるべきです。
以上の事務所名には適さない文言を避けて、事務所名の候補を絞り込みます。その際には、前述した「ドメイン取得ができる事務所名か?」「重要視するワードが左側になっているか?」等も考慮しましょう。
手順④ 正式な事務所名とネット専用の事務所名を決定する
今回紹介したネット集客できる事務所名の決め方ですが、現実的にはすべてを事務所名に取り入れることは難しいかもしれません。
実際に私自身が最終的に決めた事務所名も、専門業務や地域名を入れることはできませんでした。それは以下の理由のためです。
- 専門業務は開業後の状況により変わる可能性がある
- 地域名は事務所移転(自宅開業➡専用事務所を借りる等)の際に場所が限定される
- 専門業務と地域名を含めると事務所名が長くなる
事務所名は変更も可能であるとはいえ、やはりなるべく余計な労力になることは避けたいものです。そのため、専門業務と地域名は主にネット専用の事務所名として、以下のとおりキャッチコピー的に使用することに決めました(いずれも仮の事務所名です)。
- 正式な事務所名➡「ねこさち行政書士事務所」
- ネット専用の事務所➡「地域密着!新宿遺言書作成専門ねこさち行政書士事務所」
ホームページやTwitter等のSNSで使用する事務所名は、後者のネット専用の事務所名を使用し、行政書士登録する事務所名は前者の正式な事務所名にすることで対応しようと考えています。
まとめ:【開業準備】ネット集客できる行政書士事務所名の決め方5選
ネット集客という観点から、事務所名を決める際に考慮しなければいけないことは以下の5点になります。
- わかりやすく短い事務所名にする
- 一般的に使用されていない事務所名にする
- 専門業務や地域名が入っている事務所名にする
- ホームページのドメインと整合性がある事務所名にする
- 事務所名に含めるワード順を考慮する
事務所名が長くなる場合は、行政書士登録する正式な事務所名としてではなく、ホームページやSNS上で使用するキャッチコピー的に③の専門業務や地域名を含ませることで集客効果を高めることも可能です。
ネット集客という観点から事務所名の決め方をご紹介しましたが、もちろん集客方法はネットだけではありません。ネットの集客効果を狙うあまり、行政書士の事務所名には馴染まない名称になってしまうようなことがあれば本末転倒になりますので、くれぐれもご注意ください。
お客さまに注目され集客効果も見込める事務所名の決定のために、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。