行政書士資格の取得後、開業をするためにダブルライセンスの必要性に迷っていませんか?
司法書士や社会保険労務士など行政書士と相性が良いとされる資格は多くあるため、上位資格を目指したい気持ちはよくわかります。
しかし、ダブルライセンスを目指すには多くの時間と労力が掛かるだけでなく、ダブルライセンス取得後もそれぞれの資格に応じた専門知識と実務経験が求められます。行政書士の実務を学ぶだけで大変なのに、他の資格までに手を出すのは良い選択とはいえません。
行政書士資格一本でも十分に開業で成功できる可能性があると知っていれば、そんな余計な回り道をすることなく、行政書士開業だけに集中することができます。
本記事では、私自身の体験談をもとに、ダブルライセンスを目指すことのリスクとともに、行政書士資格一本で開業するべき5つの理由を解説いたします。
- 行政書士資格を取得したが、ダブルライセンスの必要性に迷っている人
- 上位資格を目指したい気持ちがあるが、時間や労力の制約を感じている人
- 行政書士資格一本で開業が可能なのか疑問を抱えている人
本当にダブルライセンスは必要ないのか?
まずは、私の体験談をもとに資格挑戦してきた過程とその結果についてお伝えします。
ダブルライセンス取得のために迷走を繰り返す
福祉系国家資格「社会福祉士」の資格取得を目指す
今から20年以上前、高齢化社会の到来により介護保険法の成立や福祉系ドラマが放送されるなど、世間一般にも福祉業界に注目が集まっていた時期がありました。
当時私は社会人2年目。社会の厳しさに疲れ果て、悶々とする日々を過ごしていました。もともと興味があった福祉業界に脚光が浴びていることが頭から離れず、会社を退職して福祉業界で働くことを決意します。
そしてアルバイトをしながら、福祉系専門学校に通い、無事に社会福祉士の試験に合格することができました。しかし、ここから資格取得のための迷走の旅がスタートすることになります。
関連記事:行政書士×社会福祉士のダブルライセンスを目指した5つの理由【メリットも紹介】
「行政書士」の資格取得を目指す
行政書士資格に興味を持ったのは、当時の社会福祉士の試験科目のなかに法学があったことから。社会福祉士の資格科目の中で、法学は他の科目と比べて難易度も高く受験者にとっては鬼門となる科目だったのです。
そのため、社会福祉士の法学を攻略するための手段の1つとして、行政書士資格の参考書を手にしたことが始まりでした。
無事、社会福祉士に合格したものの、特に福祉関係の職場に就職する気にはなれず、行政書士資格の受験勉強を続ける日々。法律は面白いと感じていたことや、当時は「行列のできる法律相談所」等の法律系バラエティ番組が流行(私の中でも福祉ブームから法律ブームに変わる)していたことも行政書士資格に対するモチベーションになっていました。
そして、世間的にも知名度がある「行政書士ならすごいと思われるかも?」くらいの軽い気持ちで行政書士試験に挑んだ結果、まさかの合格。
しかし、「行政書士は食えない資格」という情報を鵜呑みにして、さらなる上位資格の挑戦を続けることになります。
関連記事:行政書士合格はすごいのか?資格取得から20年目の真実
「司法書士」と「社会保険労務士」の資格取得を目指す
行政書士合格後に目指した資格は、法律系資格の中でも超難関といわれる司法書士。司法書士を目指したのは、行政書士と共通の受験科目が多いからという単純な理由でした。
そして書店で司法書士のテキストをペラペラと捲って「なんとなくイケそうなのでは?」という根拠のない自信がわいていたのも間違った選択をする後押しになります。
しかし、次第に行政書士とは比較にならない試験範囲の広さと深さに「このまま勉強していても受かる保証はない」と感じ始め、3カ月も経たずにあっけなく挫折。他の資格に方向転換します。
次のターゲットとなったのは、これまた難関資格の社会保険労務士。社会保険労務士を目指した理由は、おすすめ資格を紹介する本でイチオシになっていたこと。当時の情報に振り回されていた自分は、我ながら安易としかいいようがありません。
結局のところ、世間体も含め、就職しないための理由として、資格勉強を続けていたというのが本音だったのです。
関連記事:行政書士×司法書士のダブルライセンスを目指してみた!相違点と類似点をわかりやすく解説
ダブルライセンスを目指した結果
社会保険労務士の資格を目指してから、これまた3カ月も経たないうちに人生の大きな決断を迫られる出来事が起きます。それは、当時のアルバイト先から、正社員の誘いを受けたことでした。
既に年齢は30超え、明確な目的意識のないまま資格勉強を続けている状況を考えれば、断る理由はありませんでした。
そして、いざ正社員面接へ。面接官から言われたことは「30歳超えているから、これが正社員の最後のチャンスかな」という言葉。この是非はともかく、当時から世間の見方はそんなものです。
そして、あれだけ頑張って取得した行政書士と社会福祉士の資格については、特に触れられることもないまま、面接は終了。そして、ダブルライセンスを目指した結果は、アルバイト先に就職という残念な結末となったのです。
それから20年以上の時を経て、行政書士で開業を目指すことになりますが、このような長い迷走をしていたからこそ、ダブルライセンスにこだわる必要はなく、むしろ行政書士資格一本で開業がベストではないかと感じるようになったのです。
関連記事:【40代・未経験・コネなし】脱サラして行政書士開業を決めた8つの理由
行政書士資格一本で開業するべき5つの理由
行政書士資格一本よりもダブルライセンスで開業する方が、知識やスキルも増え、お客さまの信頼性も向上し業務範囲も広がる等、多くのメリットを享受できるように感じます。しかし、あえて行政書士資格一本で開業するべき理由について5つの視点で解説します。
時間と費用が掛かる
もっとも現実的な問題として、資格取得までには時間と費用がかかります。例として合格までの学習時間の目安は、司法書士が3,000時間、社会保険労務士で1,000時間といわれています。行政書士が800時間といわれていることを考えれば、相当の時間を費やさなければならないことがわかります。
また、行政書士よりも上位資格を目指すとなれば、学習のために掛かるテキストや参考書等の費用も無視できません。行政書士でも独学はおすすめできないほどの難関資格となっています。さらに上位資格となれば、資格予備校に通わないと合格は困難です。
さらに無事資格を取得できたとしても、士業の多くは資格ごとに登録料や会費等の費用が掛かります。資格勉強に時間とお金を費やすのであれば行政書士で一早く開業して経験を積む方が開業で成功する近道であることは否定できません。
資格取得できるとは限らない
そもそも時間と費用を掛けても、行政書士の上位資格となれば、確実に資格取得できる保証はありません。
私が司法書士と社会保険労務士の資格勉強をした経験をもとに難易度を比較すると合格の可能性は以下の感覚でした。
- 司法書士は、時間と費用を掛けても合格の保証はない
- 社会保険労務士は、時間と費用をかければ合格の可能性はある
あくまでも個人的な感覚のため、人によっては「余裕で合格!」と感じる人もいるでしょう。ただし、そのような人は、そもそもこの記事を読むような人ではないと思われます。多くの人は、ギリギリのところで行政書士に合格し、新たな道を探っているのではないでしょうか。
そのような状況で、資格取得できるとは限らないのに貴重な時間と費用を掛けるメリットは感じられません。
近年の合格率の推移は司法書士が3~5%、社会保険労務士5~7%です。行政書士の合格率が10%前後であることと比較すれば、かなりの難関資格であることがわかります。
また、法律系資格としては比較的難易度が低いとされている行政書士は誰にでも挑戦しやすいことから、そもそも受験者層が異なります。そのため合格率以上の難関資格であることを覚悟しておかなければいけません。
専門性が定まらない
行政書士は扱える書類が1万種類以上、業務範囲も広く、専門分野を決めるのに迷う開業者は多くいます。実際、今急増している行政書士YouTuberが、専門分野をテーマにした動画を数多く配信していることも、その事実を裏付けています。
そして行政書士YouTuberに限らず、多くの行政書士の先生の結論は、専門分野を絞るべきとの意見が圧倒的です。このことを踏まえ、もし、行政書士の専門分野すら決められずにダブルライセンスを目指すのであれば、ますます目指すべき専門業務がブレることになります。
私は社会福祉士の資格をもっていますが、このことがかえって私を悩ませることになりました。社会福祉士といえば、成年後見業務や障害施設の法人設立等、行政書士との親和性が高い業務があります。
そのため、行政書士開業をするにあたり「社会福祉士と親和性の高い業務を専門した方がよいのではないか?」という迷いが生まれたからです。
司法書士を取ったからには「行政書士と親和性の高い相続業務をしないともったいない」等、本質とは異なる考えになる可能性は否めません。
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資格取得が目的になってしまう
私のこれまでの司法書士やぎゃかい保険労務士等の資格を目指した経緯を読んでいただければわかりますが、そもそも私には、ダブルライセンスを目指す明確な目的がありませんでた。
それは、当時の流行や情報に流されて資格取得することが目的になっていたということです。「司法書士や社会福祉士を取って何をやりたいのか?」が明確に定まっていたのなら、違った未来になっていたかもしれません。
しかし、かつての私のようにただ資格を取りたいという考えであれば、開業も就職もできず、いつまでも資格挑戦を繰り返すだけの目的がない旅に出てしまうことになります。
私がいかに資格取得だけが目的になっていたエピソードとして、苦労して取得した社会福祉士、行政書士のいずれの合格証も紛失していしまいました。
紛失というよりは、部屋のどこかに眠っている可能性は2、高いですが、それだけ、社会福祉士も行政書士も明確な目的意識がなく取得していたことがわかります。
万一私のように行政書士の合格証書を紛失してしまった人がいましたら、下記の記事を参考にしてください。ちなみに合格証の再発行はできませんが、合格証明書の発行は可能です。
関連記事:国家資格・公的資格の合格証書を紛失してしまったら?行政書士の合格証明書を発行してみた!
行政書士でも食べていける
残念ながら現在でも「行政書士は食えない」という言葉を頻繁に耳にすることがあります。この是非はいったん置いて、では「行政書士とのダブルライセンスであれば食べられるのか?」といえば、そんなことはないはずです。
行政書士で食べられなければ、おそらくダブルライセンスで開業しても食べていくことは難しいでしょう。行政書士は食えないのは、行政書士資格一本で開業することが理由ではないからです。
私は開業を目指すにあたり、多くの行政書士事務所の実態を確認し、実際に行政書士の先生にお会いすることもありましたが、行政書士一本で開業して成功している先生は多くいらっしゃいました。
行政書士で食べられないからダブルライセンスを目指すことは、まさに本末転倒。行政書士でも食べていけるなら、行政書士一本で開業することに支障はないはずです。
関連記事:【行政書士開業】食えないと言われる理由と不安対処法を体験談をもとに解説
おわりに:ダブルライセンスは必要ない!行政書士資格一本で開業するべき5つの理由【体験談】
恐ろしいほどの浅はかな自分の資格挑戦の迷走記でしたが、いかがでしょう。同じような考えの方や、もしくは既に私と同じ迷走の旅に出ている人はいませんか?
今回の記事を読んでいただいた結果、自分には当てはまらないと感じるのであれば、むしろ、ダブルライセンスを取ることはきっとプラスになるのではないかと感じます。
しかし、私と同じような迷走をしていると気付かれた方は、もう一度、本質を見極めることが必要になります。私のように余計な遠回りにならないように、今回の記事が少しでもお役にたったなら幸いです。